そういうわけでお茶は基本的になんでも好きなのだが、中国茶のことはハサミ研ぎの元締めから教わった。新潟の燕市で採取される砂鉄を原料に作る美容師さんのハサミ。日本国内で全部仕上げるのと、工程により仕上げは台湾で行うものとある。コストの問題ももちろんだが、場合によっては台湾製の方が精度が高かったりするのだ。研ぐ方としても、正直研ぎやすいのは台湾製である。原料は同じなのだが微妙な違いがどこかで生まれてくる。で、この大阪人の元締めは仕事でなくても台湾には好きで行くくらいの人で、北西ロンドン巨大サッカー場のあるウェンブリーの大邸宅にお住まいである。この人のご自宅で台湾の青茶をいただいたのも、そろそろ10年くらい前になると思う。今まで、全く知らない味だった。水色だって青茶とは良く言ったもので、緑茶の黄緑とは全く違う青みである。程よい甘みがあり、おままごとのように小さいお猪口のような茶碗でいただくのだが、一煎ごとに味が変わる。でも、それは「ウーロン茶」なのだという。ぼくの知ってるウーロン茶はあのサントリーの茶色くてヤケに渋くて、というものだったのでものすごくびっくりした。それは凍頂烏龍という、それこそ富士山より高いかもしれないくらいの高山で取れる、「高山茶」というものだったのだ。
ぼくが始めて台湾に行ったのは2005年の初頭のことだ。日本に住んでる間は良く行っていた茶藝館「華泰茶荘」の本店にも行った(台北店は茶藝館ではなく、茶器とお茶を売っているだけ)。はっきり言ってヘネシーとかレミーマルタンよりも高い15年もののプーアル茶だとか青磁の茶杯なんかを仕入れた。茶壺は、「ちゃふう」と読む。所謂急須のことだが、宜興紫砂の鳩口水平、朱の円珠、黄の匏(うり)急須なんかは華泰茶荘の渋谷店で仕入れた。ちなみにこのお店は、道玄坂を登りきった左手の、ほとんど神泉という場所にある。リリアン糸みたいなもので蓋も編んでもらった。誠にもって、職人の技である。お茶の種類によっては「蓋碗(がいわん)」という蓋付きのお茶碗のような体裁のものを急須として、蓋をずらして注ぐのだが、ぼくは使ってない。なんだか上手く注げないし、急須が好きだし。その他の茶器では聞香杯(匂いを嗅ぐための細長い茶碗)と茶盤(急須にお湯を欠けて蒸らすので、水受けにする)、茶海(小さい茶杯に均等に注ぐためのピッチャー)はプランタン銀座の中にあったチンシャンというところで仕入れた。茶葉は華泰茶荘のほかではルピシア。かの表参道ヒルズの真向かいにある「遊茶」というお店も、ちょっとオシャレでおススメ。
ティースミスのことは前にも紹介したが、ロンドンでもやっとのことで探しだした中国茶のお店はメイフェアと、このティースミスだ。武夷水仙、東方美人、名間金萱などは大体どちらかで仕入れている。さて、今日は青磁の茶壷でいれた鳳凰単叢。ワインみたいに採れた年で全然味の違うお茶である。これは2004年もの。晴れてるし、猫も眠そうだし、グラスでぐびぐび飲んだ。日本から運んできたものなのだが、残念ながらこれで最後である。お茶うけはナツメヤシ、干しイチジク、カボチャの種、練り山査子、蓮の実の甘納豆なんかが気に入っている。でも、後者2つはまずロンドンではお目にかかれない。特に蓮の実の甘納豆。これは日本にいたときでさえ、中々入手は困難だった。未知のお茶うけを探す旅。中華街なんかに、また探りを入れてみようと思う。そういえばあのパンダンの葉っぱの入ったシフォンみたいなやつ、合うかもしれない。
2008年2月4日月曜日
自分的中国茶の世界
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