すばらしい。なにがどうトチ狂うと、こんな店がクラウチエンドとフィンズベリー・パーク間の住宅地なんかに存在できるのだろうか。はっきりいつオープンしたのかは不明だが、店らしいものが姿を見せ始めたのは2007年の暮れ頃だ。「らしい」というのは、それが一見店には見えないからである。それに、開いているのかどうかも判然としなければ、実際週の半分以上はシャッターが閉まっている。屋号はChairman Mau Mau。この屋号、その面白さはかなり翻訳しにくいと思う。ダブルミーニングだし、歴史的なコンテクストにその面白さが大きく依存しているからだ。まず何のお店なのかというと、椅子を売っているお店である。椅子を売っているお店なのでチェアマンというのはもちろんだが、英語でいう毛沢東主席(Chairman Mao)、その主席の「席」と椅子をかけているわけである。そして、Mau Mauというのは1952年から1960年まで続いた反英ケニア暴動のことである。これはまさにミッドセンチュリー、ちょうどイームスの椅子がデザインさ れ、世に送り出された時期に呼応する。それにしてもこのお店、売っているのは椅子だけで、それもヴィンテージのイームスばかりである。グラスファイバー製のようだし、現在は生産されていない色のようだし、なによりその<よれ具合>から察するに、おそらくはすべてオリジナルか70年代までに生産されたものであろうと思われる。店内にはDSR、DARを始め、ワイヤーのDKRやDKXもある。LCM/DCMからEA106やEA108などがあることもある。
というわけでおよそ店らしくないのだが、開いてるといつ見ても楽しい。不定期でしか開いてない上、開いていても紙切れに「ばんばんドアを叩くか、この携帯にかけて」と番号が書いてあるだけだ。商売っ気のカケラもない。しかも、住宅地の外れ、路線ひとつだけのバス通りのちょうど曲がり角というものすごく鬼門っぽいところに位置しており、お店の中にはオールドスクールな大型のスピーカーとターンテーブル、数十枚のレコードに0号か1号程度の大きさのカンバスの抽象画が何点か置いてあるだけである。ぼくがお店の前を通りかかったときに、中に人がいたことはない。今度お店の人がいたらいろいろ詳しく聞いてみようと思う。
2008年2月11日月曜日
ご近所探検隊:Chairman Mau Mau
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