2008年2月9日土曜日

ピンターの舞台、二本立て

ハロルド・ピンターの舞台を観にいくのは昨年の夏の「背信(Betrayal)」以来だ。ピンターは、ものすごく賢いダイアログに、切れ、冴えとも最高峰だろうと思しきストーリーテリングの妙に尽きると思う。不条理劇という読みもあるようだが、敢えて分りにくい状況設定で、観終わったあと「実際のところはどうなんだろう?」と考えたり、話し合ったりすることこそが魅力だと思う。

さて、今回のお題目は中編の戯曲「The Lover」(1963年)と「The Collection」(1961年)を二本立てにしたというものである。1月の中旬から始まったのだが、やっとマチネーが取れたので行ってきた。ヘイマーケットをちょっと外れたパントン・ストリートに1881年から建っているコメディ・シアターでの上演である。主演はジーナ・マキー(最近の作品では映画「つぐない」にも出ている。「ノッティング・ヒルの恋人」では車いすに乗っていた)にリチャード・コイル。それにチャーリー・コックスという若手と重鎮ティモシー・ウェストの4名によるピンターとくれば、もう「行くしかねえ」である。

感想はというと、一言で言って凄くおもしかった。ちょっとシュールな話(tale)の展開もそうだが、話の伝え方(teller、すなわち演技や演出などのライブの要素)がいい。芝居も申し分ない。「The Lover」は基本的に2人しか出てこないが、中心人物は妻であるサーラだ。ジーナ・マキーを舞台で観たのは始めてだったが、舞台女優としても映画やテレビ作品で見せる<妙に落ち着かない気持ちにさせる>演技こそが、この人の魅力だと思う。「The Lover」で夫を演じるリチャード・コイルは、次の「The Collection」で全く違ったタイプの人物を演じるのだが、この変わり身がまた凄い。ちょっと同じ人とは思えないくらい違う。

ドタバタでは決してないが、ちょっとオトナの笑いがふんだんに散りばめられている。音楽の使い方も良かった。密室劇的な展開だが、舞台ならではの臨場感。いや、実に楽しかった。ロンドンに住んでいて、ラッキーだなと思うことの一つ。

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