特に理由があってということではないのだが、初公開から半世紀以上たっている映画のレビューというのをひとつのテーマとしてみようと、ふと思ってしまい。今回は特に、まだDVD化されていない作品から(早くDVD出してね、という願いもこめて)。
衣笠貞之助監督作品「地獄門」
衣笠貞之助は、話題性では「狂った一頁」に軍配が上がるだろうが、おそらく海外で一番有名なのは「地獄門」だろう。邦画初のイーストマンカラー、日本映画として初のパルム・ドール受賞作、初のアカデミー賞外国語映画賞受賞作という、「初づくし」である。しかし、こうした情報に踊らされると審美眼が曇るというものである。平安後期という時代設定、「んなやついねーよ」的な人物像、ダイナミックなカット割りに編集。この作品までに200本以上の映画に出ている長谷川一夫の珍しくもカタい演技、京マチ子の妖艶さ。この時代だからできた色彩をこそ楽しめ、という作品かもしれない。1953年作品。
枝川弘監督作品「恋と金」
正直、枝川弘がどんな監督なのかは全く知らない。1950年代の10年程度の短い期間に「寡作?」ほどの数の作品を残していること、クレージーキャッツのコメディを撮っていること以外は情報が見つからないのだ。「恋と金」は主題的にはドタバタ的だし、深い映画では決してない。ただなんとなく面白かったな、と思えるような映画である。登場人物もバラエティに富んでいるが、中でも秀逸なのは山本富士子だ。いや、山本富士子がすべてと言ってしまってもいいかもしれない。小津安二郎の「彼岸花」、市川崑の「雪之丞変化」を両極端として、「恋と金」の山本富士子は自然でバランスのいい芝居を見せている。演技の幅の広さ云々というより、かわいいのだ。1956年作品。
2007年11月16日金曜日
古い映画を観よう:その1—衣笠貞之助と枝川弘
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