ルー・ドナルドソンのアルバムに、ロニー・スミスのハモンドB−3がフィーチャーされていなかったら「アリゲイター・ブーガールー」があんなにリスペクトされた作品として残っていただろうかという疑問。ブルーノートはジャケットのアートワークの独創性の高さでも知られているが、あれがペギー・モフィットでなかったらあれほど視覚的にインパクトの強いものになっていたかどうかという疑問。コンテクストとパースペクティヴ。そして個人的な思い出。
今日はエインジェルに行ってきた。アンティークの街として知られているエインジェル。かつて住んでいたストーク・ニューイントンへの玄関口的な位置付けで、足を運ぶ頻度の高かったところだ。最近映画館も入っているショッピングセンターのようなものも出来て様相が変わったと早合点してしまい、足が遠のいていた。今日はかつて良く行っていたカフェやカレー屋さんやアフガン料理屋さんなどのチェック、アッパーストリートの家具屋さんの偵察も含め、久しぶりのエインジェル探索である。そもそも、ぼくにとってエインジェルに通り道以上の価値が生まれたのは友だちに教えてもらったカフェのせいなのだ。ちょっと独特なそのアートセンターの最上階のカフェは「誰にも教えないでね」という触込みで教えてもらったところだ。なんとなく、60年代風の雰囲気。モデルもしたことのあるその友だちは、ジーン・セバーグやジャンヌ・モローがタバコを吸う様を観て、タバコを吸い始めたのだそうだ。本人に直接言ったことはないのだが、ぼくはその友だちに初めて会ったときに、ペギー・モフィットみたいだと思った。顔が似ているとかではない。凛としたオーラとか、そういうことだと思う。ポリー・マグーよりは、アリゲイター・ブーガルーのイメージだ。そんなことを思い出しながら、歩くエインジェル。当時より商業の匂いはするが、街全体の雰囲気は思ったほど当時と変わっていない。あのカフェで何時間も話したこと。冷たくなったコーヒーの匂いや暗くなり始めた外の様子が蘇ってくる。今でも時々思い出される一言がその友だちから発せられた瞬間の凍りついた空気が、ぼくを撃つ。エインジェルだなんて、なんという象徴的な名前なんだろうと思う。
映画館の喧噪を足早に交わしつつ帰路に着く。かつてのお気に入りはすべて健在だった。ちょっと安心するひと時。
2008年3月29日土曜日
モフィットとエインジェル
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