Bird's eye viewというのは英語でいう「鳥瞰」のことだが、birdというのは鳥という意味の他にも俗語表現で「かわいこちゃん」的な若干オールドスクールの表現における若い女性一般も意味する。今年で4年目を迎えるBirds Eye View Film Festivalだが、このフェスティバル名は「女性の観点」と「鳥瞰」をかけたダブルミーニングなわけだ。2008年度は、3月6日から14日までの開催である。企画主催とも女性によるイニシアティヴ。ロンドン市内のいろいろな映画館をまたにかけて、いろいろなテーマの企画が盛込まれている。HD(カタカナで言う「ハイビジョン」のこと)による映画作成技法のようなワークショップも、もちろん女性の映像作家が講師だ。招待作品の中には日本からも河瀬直美監督の「殯の森」(公式ページはここ)や蜷川実花の監督第一回作品「さくらん」もある。ちょっと、楽しみである。と、月が変わってすぐの今日、今回のフェスティバルの企画にぴったりの古い映画が先行上映された。女性の視点、いや、「女の戦い」とでもいうべきフェスティバルの企画に即した名作である。キャサリン・ヘプバーンとジンジャー・ロジャース主演の「ステージ・ドア」だ。
物語は、ニューヨークの女子寮に始まる。ブロードウェイを夢見る、女優の卵たちが住人である。ここに、女優としての独立を証明したい財閥令嬢テリー(キャサリン・ヘプバーン)が乗り込んでくる。長い住人で踊り子としてはそれなりに成功している舌鋒鋭いジーン(ジンジャー・ロジャース)と同室を命じられ、速いテンポで話は進む。女子寮に住んでいる女優の中にはデイヴィッド・リンチの「マルホランド・ドライヴ」でココを演じていた、若き日のアン・ミラーもいる。影が薄いが演技派のケイ(アンドレア・リーズ)しかり、あまりにも豪華な顔ぶれなので、「顔ぶれの豪華な映画」にされてしまう危険性があるが、この映画は決してそれだけではない。研ぎすまされたダイアログ、軽やかな応酬。ジンジャー・ロジャースはフレッド・アステアとのダンスだけではないというのも、この映画を観るだけで分るはずである。手堅く印象的。そしてなにより、この映画はキャサリン・ヘプバーンの映画である。豪華な顔ぶれで、主役に負けない幾多の女優が出演しているにも関わらず、である。演技の下手な俳優を演技するというのは、相当に上手くないとできないと思う。悲劇がもたらした女優開眼を、ヘプバーンは2カットだけで演じきる。
この後数年続くヘプバーン主演によるスクリューボールの黄金時代、名作「素晴しき休日」、「フィラデルフィア物語」を予感させる1937年度作品。
2008年3月2日日曜日
古い映画を観よう:その4「ステージ・ドア」
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