2007年12月24日月曜日

セントポールでキャロル

ロンドンでクリスマスを迎えるのは10年ぶりである。毎年妻の実家に行くのが通例なのだが、今年は猫もいるし、パリに行くより電車賃が高い上に、電車の工事で片道1時間半の距離を5回も乗り換えないと辿り着けないことが発覚したので、おとなしくロンドンに残ることにしたのだ。せっかくロンドンに残るので、ツリーも買ったし、ケーキも焼いたし、ローストチキンでディナーである。イヴの今日、すべきことはミンスパイという伝統的なお菓子を焼くことと、スタフィング(まあ詰め物、ですわね)を準備しておくことだ。ミンスパイは妻の担当、ペイストリから全部手作りである。ミンスミートという、かつては肉が入っていたいためこの呼び名が残っているが、基本的にはドライフルーツを酒と油脂で浸け込んでおいたものを餡にして、ペイストリで包む。うちはスペルトという古代品種の全粒粉を混ぜる。ぼくがパンを焼くときに使っている粉だ。スタフィングは紫タマネギをゆっくり炒めて、豚の挽肉に栗とドライフルーツを混ぜる。クランベリー、ブルーベリー、スグリなんかも入れて、ローストポテトはガチョウの脂でローズマリー、ニンニク、レモンとオレンジの皮も混ぜ込んで焼くのだが、芋の下茹では今日中にしておく。

これを午前中までになんとか終わらせて、午後4時から開始のキャロルサービスというのに行ってみた。ウェストミンスター寺院も候補地ではあったのだが、なんとなくセントポールに行ってみたいかな、程度の理由。入れるかどうかは、行ってみないと分らなかったのだが、セントポールを半周する程度の位置に並べたので、それほど待たずに入れた。何しろ、教会での行事なので予約できないのだ。賛美歌や朗読で構成されており、パイプオルガンも鳩尾に響く。荘厳な空気の中、1時間強のサービスは厳かに終わる。

ちなみに、イギリスで伝統的とされているクリスマスというのは、ヴィクトリア王朝期の前半に<トレンディだった>過ごし方なんだそうである。それこそ七面鳥を食べるとか、ツリーを飾るみたいのは1843年刊、チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」に出てくるのだが、これは当時の流行だったのだ。本の刊行をきっかけに、そうした過ごし方がもう爆発的に流行った。まあ100年以上続いてれば、立派に伝統だろうけども。

さて、うちはそれほど伝統には則らない。ガチョウのローストは、家の家計では現実的でない。でもちゃんと臓物も取ってあるサトン・フーという地域の原っぱで放し飼いにされているチキンだ。(サトン・フーはサフォーク地方、6、7世紀のアングロサクソンの墓場が見つかっている、ちょっと有名な地方である。)フダンソウ、黒キャベツ、ビーツの葉などを炒めでディナーに添えるのだが、アンチョビとローズマリー、唐辛子ににんにく3カケをバターに練り込んだものにバルサミコ酢である。皮の黒いにんじん、黄色いにんじんなどをマリスパイパーという品種のジャガイモと一緒に茹でて、先刻のローストポテトにしちゃうのだ。といった感じで、明日のお昼はご近所の猫仲間も食べにくるミンスパイとアッサム茶。

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