まったくオタクな話で恐縮なのだが、父がオーディオに凝るタイプの人である。おかげで子供の頃からいい音でレコードを聴くという環境に恵まれていた。ロマン派のクラシックと、王道系ジャズを好む父が長く使っていたのは以下のシステムだ。まずテクニクスのターンテーブル、デノン(当時はデンオンという社名だった。ぼくは今でもデノンという社名に馴染めない)103という当時のFM局のほとんどがコレというMCカートリッジの後継機種にヤマハのプリアンプ、山水のメインアンプ、スピーカーはなんとJBLの4320筐体に4333Bのウーファーを積んだもの。ちなみに、テープはTEACのオープンリールである。これはしかし、今考えると大胆な構成である。骨太の入り口と出口だが、制御部が華奢だ。カタチ的には、逆ブロントサウルスとでもいったところか?父が意識的にそうしたのかどうかは分らない。しかしこの組み合わせが、父のかけるシューベルト、オスカー・ピーターソンなんかには実に僥倖というものだったのだ。全部が骨太な構成だった場合、下手したら「聞け、この野郎」的な出音だったところだろうが、ヤマハ=山水でフィルタされたMJQはミルト・ジャクソンのペダルまで聞こえてきそうな柔らかさ。真空管でこそなかったが、山水のパワーアンプの音を知っている人は、今ではもう少ないのではないだろうか。
そんな感じでずっとオーディオには興味があるのだが、現在はiPodを電波で飛ばし、それをヴィンテージのレシーバーで受ける、というシステムである。しかもモノラル。Bang & OlufsenのBeomaster 700という1960年代後半に制作されていた機種なのだが、これも実に「出会い」があった。
青山に、and upというお店がある。ぼくはこのお店のことを2004年に英語メディア(WIREDの記事)で知った。「東京に、iPodとアナログを融合させたオーディオショップがある」と聞いては、行かない訳にはいかない。ちょっとお店があるようには見えない2階、古いMacと古いオーディオ。トランスミッターから飛ばされた電波を受信して、真空管ラジオがiPodの音楽をかけている。天才である。この組み合わせを思いついたところで、既にオーナーの勝利である。日本にいる間は、ほとんど通うように出入りしていた。といった感じで、栄田さん、お元気ですか?で、2006年の春に行ったand upで、ぼくはB&Oに出会ってしまったのだ。「聞いてみます?」と気さくに手持ちのiPodを試聴させてくれた店員さん。オーバーホールされて、新品のときよりも出音が太くなっているBeomaster 700で聞くバーデン・パウエル。気がついたら口が「これください」と言っていた。この機種のことはそれまで全く知らなかったのだが、調べてみると中々の逸品だったことが分る。その後のB&Oのデザイン性を決定することになった建築家ヘニング・モルデンハウアー設計による量産型トランジスタとしては当時画期的だった900のモノラル版。全くの幸運だった。
友だちからも道楽が過ぎると罵られたが、家にいるときの音楽の聞き方としてはもう、これ以上はない。はっきり言ってサイコーである。壊れるまで使い続けてやるけんね。
2007年12月17日月曜日
幸か不幸か、オーディオ癖
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