2008年1月25日金曜日

間に合いました、「芸術と性の歴史」展

バービカンは、ちょっと独特である。コンサートホールもあって、ギャラリーや映画館なんかもあるのに、同じ敷地内に人が住んでいる。それもかなり大規模なもので(イギリス人にはあまり人気のない高層マンション)、なんと6500人も住んでいるそうである。バービカンを、コンクリートの高層だというだけでもう真っ向から毛嫌いしている人も少なくないが、ぼくは好きだ。住んでみたいとすら思う。ドアを開けたらそこが映画館なんて、考えるだけでも垂涎である。で、その映画館はカッティングエッジで音響もいいし2列は作れるであろう奥行きにたっぷり1列のみの座席はおケツが痛くなることもない。マイケル・ティルソン=トマス指揮によるライヒ「砂漠の音楽」みたいな演目だってお手の物のホールだってある。日本には、こういう場所はちょっとないんじゃないかと思う。施工には紆余曲折あり何十年もかかって1982年に完成、2007年に25周年を迎えた。戦後の、まだ瓦礫の山だったロンドンのシティの穴だったバービカンを埋める計画が持ち上がったのは、もう60年以上前のことらしいが、その多くは70年代に建造されたものだという。ぼくが始めてバービカンに行ったのは「マン・レイ」展を見にいった1991年初頭のことだったので、オープンから10年経ってなかったことになるが、ものすごく古く見えたのはそのせいかもしれない。それに「ここって、人の家じゃないよね?」と思ったことも覚えている。

で、今回のアートギャラリーの催しは、その名もスバリ「Seduced: Art & Sex from Antiquity to Now」である。2000年以上という時をカバーし、ローマ帝国時代からフラゴナール、春画、カーマスートラ、ジェフ・クーンズ、アラーキーまで網羅しているそれなりに大規模な展覧会である。実は2007年10月には始まっていたのだが、今週末で終了なので、急いで行ってきました、というやつである。この「Seduced」展はマーティン・ケンプという美術史家がキュレーターなのだが、ナショナルギャラリーでダ・ヴィンチなんかもやっている、けっこうな大御所である。一回り見て、ケンプのテーマが<どこまでがアートで、どこからポルノか>、なんであろう立脚点が垣間見える。公共のギャラリーで4ヶ月という長期間、性に関する展示会を開くだけでも相当なものだと思うが、正直感想は、

「で?」

である。確かに、色々寄せ集めている。トレイシー・エミンだって歌麿だって、それなりの存在感だ。でも、「だから何?」が否めない。「ふーん、そうなんだ、じゃ次行きましょう。」脚を止める要素に、残念ながら欠ける。とは言っても、所々はそれなり面白かった。k r buxeyという全部小文字で表記するのが正しいイギリスのアーティストがウォーホルに捧げたビデオ作品は、フォーレのレクイエムをバックに女性のアップがスローモーションで映されているだけのミニマルな作品だ。ミニマルな作品なのだが、この人は見えないところでオーラルセックスされているわけである。諧謔である。そして、風刺である。会場での人間模様も面白かった。概して平然としている、あるいは勃起したペニスを観てゲラゲラ笑っている、みたいのは女性だった。

といった感じでバービカン。1954年当時、まだ実績らしい実績のなかった「チェンバレン、パウェル、ボン」という三羽烏の建築家が68年までかけて設計したバービカン。地震のほとんどない国に建てられた高層マンションの脚は、空手チョップでも食らわせたらポキッと折れちゃいそうに華奢に見える。が、歴史的建造物として保護もされているバービカン、今度のスピタルフィールズの帰りにでも、また寄ってみようと思う。(なお、バービカンに関するデータは愛読書の一つであるヒースコウト著「Barbican: Penthouse Over the City」による。)

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