2007年観た映画の中で一番インパクトが強かったのは、ぶっちぎりでツァイ・ミンリャンの「西瓜」である。ただし制作年度は2007年ではなく、イギリスでは初公開が2007年だった、ということだけれども。(ちなみに2006年の<今年の一本>はアルモドバルの「ボルベール」だった。)
しかし「西瓜」には参ったの一言である。かつて、こんな映画は観たことなかったと断言していいと思う。要素要素は、それと似たような風のものがないわけではない。たとえば極端に台詞の抑えられた長回しは溝口的かもしれない。「あまりにも暗過ぎて笑っちゃう」的な部分はカウリスマキだろう。<映像美の極み>的にはトラン・アン・ユンの「青いパパイヤの香り」を彷彿とさせるものもあるし、(おそらく)本編と無関係なのであろうシュールなミュージカルシークェンスなど、モンティ・パイソン的な部分さえあるかもしれない。
しかしツァイ・ミンリャンの世界は独自のものだ。それはもう、ツァイ・ミンリャンというジャンルと言っても過言ではないと思う。たとえば、60年代にクロード・ルルーシュの「男と女」が世に問うた愛。陳腐かもしれない。新しくもないかもしれない。ついに見つけた心の拠り所は微笑ましいものではなく、グロテスクに脳化された21世紀の最初の10年に「西瓜」によって再燃されたとも言えるかもしれない。それは、ある意味奇跡的な示唆である。
2008年1月3日木曜日
発表、超個人的2007年度「今年の映画」賞
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿