2007年12月13日木曜日

ものすごく忘れられない画像-ピーター・ヒュージャー展

トラファルガー広場から、威圧的なことこの上ない門をくぐってバッキンガム宮殿まで伸びるのが、「ザ・マル」という名前の大通りである。この道の、知らなければ見逃しちゃいそうな入り口をもって、ICAは佇んでいる。

ICAは<現代芸術協会>的な意味合いだが、ギャラリーのみならず映画館があったり、(ぼくもDJしたことがあるけど)クラブナイトも開かれていたりする。パゾリーニの「ソドム」もここでしか上映されなかったし、日本のキモオタに焦点を当てた展覧会が開かれるなど、ちょっと心に引っ掻きキズを残すようなカッティングエッジさが売りだ。

今月始まったのはピーター・ヒュージャー展。英国内では始めての回顧展だそうである。ヒュージャーがどれほど日本で知られているのかは分らないが、ぼくがまだ日本にいたときは聞いたこともなかった名前だ。多くは白黒の写真で知られる写真家だが、ぼくがヒュージャーのことを知った頃には、ヒュージャーはとっくの昔にエイズによる合併症で亡くなっていた。1987年のことだ。被写体にはニューヨークのアートシーンに見るセレブ、家畜、ヌードが多い。ウォーホル映画に多数出演しているキャンディ・ダーリンの死床。ナン・ゴールディンも、もっとも影響を受けたのはヒュージャーだと公言しているそうである。

久しぶりに足を運んだザ・マルのプラタナスは、ここ数日の寒波ですっかりハゲ坊主になっている。路面は凍結している。東京近郊の育ちだからかもしれないが、凍った道を歩くのには、慣れていない。さて、相変わらず見逃しちゃいそうなICAにて見るはヒュージャーだが、威風堂々たるシャーペイのポートレイトもさることながら、一番気に入ったのは75年に撮影されたスーザン・ソンタグである。なにがそうさせるのかは分らない。が、ぼくはこの写真の前で下手したら10分くらい立ち止まっていたのではないだろうか、恐ろしく目を引きつける写真だと思う。解説にはinsoucianceとあるが、これが無頓着か?シーンの構築に貢献したという自負は、この視線には現れていないのか?「よそ者」のニューヨーカーを、内部からえぐり、見つめているからこそ、天井があれほど遠い場所にあるのではないのか?

という感じでピーター・ヒュージャー。生と死のポートレイト。2008年1月27日まで開催。

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