2008年4月26日土曜日

「ペルセポリス」、観てきました

ヘンデルの「ラールゴ」は、今ではほとんど上演されないオペラ「クセルクセス」の中の一曲である。今から遡ること20年ほど前、某ウィスキーのCMでキャスリーン・バトルの歌う「オンブラ・マイ・フ」として、テレビでも放映されていたので、お茶の間での知名度もそれなりに高いのではないだろうか。で、その、クセルクセスというのは何かというと王様の名前である。紀元前5世紀アケメネス朝の王様なのだが、この人の父親であり、アケメネス朝4代目の帝位を君主制に基づいて引き継いだ王様がダレイオス一世である(諸説あり)。ダレイオスと、クセルクセスの代に遷都され、当時まだ建設の続いていた都市国家がペルセポリスだ。ペルセポリスは、現在ではユネスコの世界遺産に指定されている。

イラン人の友だちは二人いる。どちらもパーレヴィ王政の崩壊した1979年にロンドンまで逃げてきた人たちだ。一人は新聞社の、かなり上層部で働いているお父ちゃんで、もう一人は当時まだ小学生だった女の子である。フランス映画「ペルセポリス」のマルジにも、ちょっとだけ境遇が似ている。この友だちは英語もまったくイギリス人のそれで、特にイラン人としてのアイデンティティを表面に押し出している人ではない。79年に何が起こったのかも、サラッと「逃げてきたのよ」と素通りくらいで、境遇については落ち着いて話たことがあるわけでもない。それにしても、いかにぼくはイランのことを知らないのかを痛感させられる。クセルクセスがイランの王様であることも、ペルセポリスがイランにあることも知らなかったのだ。

映画「ペルセポリス」はアニメではない。監督マルジャン・サトラピの半生を綴ったグラフィック・ノベルを、忠実に動画に置き換えたものだと思う。実写だったら遠い世界の出来事が、動画であるがために親近感の沸くものになっている。ところで映画には、世界遺産の話は全く出てこない。まして、クセルクセスのことには一言も触れていない。西洋でも馴染みの深いポップ文化への参照のほうが、よほど豊富だ。ぼくとサトラピ監督とは同年代ということもあって、<自分もやったなー、「アイ・オブ・ザ・タイガー」に合わせてゲンコツ突き出すの>、みたいなところでも楽しい映画だ。悲惨な現実を、ユーモアたっぷりに綴ったイランの近代史。

ところで、声の出演だが、大人になったマルジはキアラ・マストロヤンニで、マルジの母タージの声はキアラの実母であるカトリーヌ・ドヌーヴである。イギリスでは、この辺は全く話題にならなかったけど。

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